断崖絶壁のわずかな出っ張りに指をかけて、命がけで体を引き上げていく。そんなヤバすぎるクライミング体験ができるゲーム『Cairn』(ケルン)が、PS5/PCで1月30日に発売されました。
開発はThe Game Bakers。過去に何度かデモ版を触ってたんだけど、製品版のPC版をプレイしてみたら期待を余裕で超えてきた。正直、個人的にはオールタイムベスト級。今年のGOTY候補と言っても過言じゃないレベルです。
目次
前人未到の難関峰”マウント・カミ”に挑む過酷なサバイバル
主人公は登山家のアーヴァ。プレイヤーは彼女を操作して、何世代にもわたって人類の挑戦を拒み続けてきた未踏峰“マウント・カミ”の登頂を目指します。
ゲーム中のほとんどの時間は壁登り。指先をひっかけられる出っ張りを探して体重を預けて、じっくりと登っていく。出っ張りがない斜面も使えるけど、グリップが甘いと手足が滑って、体重を支えきれずに落下……。
だから壁をよく観察して、安定して登れそうな出っ張りが連なるルートを見つけるのが超大事。厳しそうなエリアでは命綱を繋ぐピトン(ハーケン)を壁に打ち込みつつ、4つの手足をフルに使って文字通り一手ずつよじ登っていきます。

輪郭線が出てる部分をたよりに指先をひっかけられる場所を見つけて、よじ登っていく。
そしてこれがまた、体をグイっと引き上げる肉体感覚がコントローラー越しに伝わってくるのがすごい。『デス・ストランディング』で山道を歩いてる時のあの没入感に近いかも。
一方でスリルもエグい。グリップが不安定になるとアーヴァの息が荒くなって、立て直すのに超絶緊張する。落下すると絶叫のような悲鳴が響くし、マジで心臓に悪い。ピトンをちゃんと打ってれば復帰できるけど、手に汗握るってまさにこのこと。
でも、そんな極限の勝負だからこそ、大きな壁を登りきった後に絶景を眺める瞬間の達成感がハンパない。開発が「ひとつひとつの壁がボス戦のようなもの」と言ってるのも納得です。

落下すれば死亡。だがこの手が届いて這い上がれれば一旦休める……。
サバイバル要素に追われながらどう探索するか?
危険なのは落下だけじゃない。本作にはサバイバル要素があって、餓えや渇きのパラメーターが存在。食糧や飲み物を適度に摂取しないと能力が低下して、登攀中に失神したり死んだりすることも。
しかもアーヴァが事前に用意した物資だけじゃ全然足りないので、山のあちこちで水を汲んだり自生しているものを採ったり、先駆者たちが残した物資を回収してやりくりしていくことになります。

山のあちこちでは先人たちが遺した物資を回収できる。

ビバーク中は水と食材アイテムを使って料理を作れる。回復量が増えたりするので、調理用の余分な水も確保したいところ。
ゆっくりと餓えや渇きに追われる中で、物資を探索しながらどういうルートで登るか? ここが本作の一番面白いポイント。
山頂以外に示される”目標地点”はなく、登れる場所ならどう登ってもいい。セーブ・ビバーク可能な中継地点はもちろん、NPCイベントや強力なアイテムすらもスキップできちゃう自由度の高さ。
最初のうちは”とにかく登れそうなところを登る”だけで精一杯だけど、慣れてくると「あそこの洞穴行ってみるか」「この壁の先のアイテムは外せないよなぁ」と、冒険の幅が広がって俄然楽しくなってきます。

地図アイテムを入手すると、各ルートの難度や注目アイテムの場所を確認できるようになる。
チュートリアルは全部やれ!一度難度を下げてプレイするのもアリ
難度は3種類。イージー/ノーマルにあたる“エクスプローラー”、ハード寄りの“アルピニスト”、そしてクリア後向けの“フリーソロ”。
アルピニストは”開発が本来のCairnの体験として意図した難度”とのことだけど、初見プレイだとちょっと厳しめ。エクスプローラーでは落下時に巻き戻し機能が使えたり、適度にオートセーブしてくれたりする違いもあるんだけど、とにかくアルピニストはサバイバル要素がキツい。

エクスプローラーなら転落時に巻き戻しを発動できる。色でグリップ度が表示されているので、余裕があった時点まで戻すのもアリ。
僕は最初アルピニストでスタートしたんだけど、6時間ほどプレイしたところで「これラストステージだろ」と思っためちゃくちゃ長い岩壁の途中で食糧が尽きて、にっちもさっちもいかなくなって心が折れた。……後で分かったけど、その壁は全然ラストじゃなかった。
じゃあ無理ゲーだったかっていうと、そうでもない。一旦エクスプローラーでクリアしてから最初にギブしたセーブに戻ってみたら、意外にも苦労せず立て直せた。判断力を含めたプレイスキルが向上するだけで、難所も簡単に通れるようになるのが面白い。

中盤以降は休憩地点のない長い壁が続く。メシの量を見誤るとなかなかキツいハマりに陥ることも。
ボルダリングジムでのチュートリアルは全8ステージあるけど、最初の3ステージをクリアすれば本編に進める。初回は「後半のステージなんてチャレンジコンテンツでしょ?」とスキップしたんだけど、まさに「山をナメてはいけない」。
マウント・カミの難所(特にオーバーハング気味の場所)を登るのに必要なスキルはチュートリアル後半にちゃんと詰まってるので、いきなりアルピニストで遊びたい人はまずチュートリアルを全部やるのがおすすめ。
個人的にはまずエクスプローラーでプレイしてからアルピニストに挑むのがベスト。結構幅広いルート取りが可能だし、隠しチャレンジもあるので、複数回プレイしても発見があります。

垂直に並んでる壁を登るテクとか学んでおくと、イザという時に役に立つ。

難所に挑んだ結果、グリップ力を上げるチョークの携行量を増やせるチョークバッグを発見。
フリーソロ難度は、バッグが小さくなり、ピトン使用禁止、セーブはゲーム中断時の一時セーブのみ(落下時にゲームを落としても再ロード不可)。しかも基本ワンライフという鬼仕様。でも慣れてくると意外と進めるし、過去に避けてたルートをあえて攻めるようになる。人って変わるもんだね……。

フリーソロではピトンで安全地帯を作れないし、荷物も少ないしで、素早く確実なプレイが求められる。でも慣れると”いい緊張感”が心地よくなる。
それでも山を目指してしまう、哀しき孤高のエゴイストたちの物語
ゲームプレイも唯一無二だけど、ストーリーもなかなか攻めてる。
主人公のアーヴァは世間的な「いい人」じゃない。マネージャーからの連絡を平気で無視し、思い通りにならないとすぐキレる。難関峰の登頂以外のすべてを後回しにするストイックなエゴイスト。
そして山には、死に場所を探してやってきた人、パートナーとの生活を始める決意をしながらいずれ戻ってくることを予感している人……マウント・カミの魔力に惹き寄せられて散っていった人々の手紙が残されている。

果たしてこの手紙の主は生きて帰り、地上での生活を始められたのだろうか?
「生きて下山できれば勝利だ」なんてメッセージも出てくるけど、彼らには、そしてアーヴァには、その言葉の芯は届かない。これは映画『セッション』のような、すべてを賭けて孤高の高みを目指してしまう人々の物語だと思う。
だから登りきった先にあるのは、ファンファーレとともに祝うような単純な勝利の喜びじゃない。結末の評価は分かれそうだけど、ゲームではなかなか描ききれない複雑な感情描写に挑んでいると感じました。

終盤はマウント・カミの自然との壮絶な戦いになっていく。

カミには何人かの人々が生活を続けているが、皆ちょっと壊れてしまった人ばかり……。
何度も遊べる厚みを持った唯一無二の体験
クリア時間は1周6〜8時間くらい。ただし探索やフォトモード、同じところの再トライも含めてなので、人やプレイスタイルによって結構異なると思う(公式にはメインストーリーだけで12時間)。
不満点を挙げるなら、入力に対して手足の配置の補正がたまに変な動きをして、”意図と違う場所に手足を置いてしまってアワアワしてるうちに落下”ってことがたまにあること。あと、ビバーク中に雪をコンロで溶かして水を作れないのはちょっと惜しい。まぁそれができたらバランス崩れそうだから仕方ないけど。
とはいえ、大抵のことはプレイを通じた学習でカバーできるので問題なし。クリアしたらさっさと次のゲームに行きがちな僕が、フリーソロであれこれ試して遊び続けてる時点で、その中毒性は伝わるかと。マウント・カミの魔力、恐るべし。

出っ張りの少ない難所ではこのムーブが必須。マニュアル選択と組み合わせるとガシガシ登れるようになる。
知っておくと便利なTIPS
- 体を伸ばして高所を掴むムーブを覚えると登攀速度が一気に上がる
- 出っ張りかへこみか分かりにくい時は、カメラの角度を変えて判断
- 飲み物はビバーク中の料理メニューから”温め直し”ができる
- ビバーク地点の近くに水源があれば料理画面から水を補給可能
- 睡眠ゲージはないので、寒さが問題なければ深夜でもアタック続行OK
- 暗くなったら背中の照明を点灯(L2/LT+上)
- グリッピングテープの巻き直し(L2/LT+右)はビバーク外でもできる


