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はじめに:公開5日で10億突破の快進撃
公開5日で興収10億突破、前作対比197%の動員。ガンダム映画としては異例の勢いで話題をさらっている『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』。
SNSでは「ガンダム初めて観たけど泣いた」「IMAXの没入感がヤバい」「ギギが魔性すぎる」といった声が溢れている。従来のガンダムファンだけでなく、20代〜30代の新規層が大量に劇場に足を運んでいるのだ。
「ガンダム観たことないけど気になってる」「前作は観たけど設定がよくわからなかった」──そんな人に向けて、ネタバレなしで予備知識をまとめた。この記事を読めば、劇場に行く前の不安は消えるはずだ。
そもそも『閃光のハサウェイ』って何?
ガンダムシリーズの原作者・富野由悠季が1989〜90年に書いた小説が原作。全3部作の映画化で、今回の『キルケーの魔女』はその第2部にあたる。
第1部は2021年公開。興収22.3億円を記録し、「ガンダムってこんなにかっこよかったの?」と新規ファンを大量に生み出した。そこから約4年半ぶりの続編だ。
原作小説は、当時のガンダム作品としては異例なほど「大人向け」の内容で、政治スリラーと人間ドラマの要素が強い。ロボットアニメというよりは、「政治の腐敗に立ち向かうテロリストの葛藤」を描いた文学作品に近い。

最低限知っておきたい世界観
舞台は宇宙世紀(U.C.)0105年。私たちの暦が「宇宙世紀」に変わり、人類が宇宙のコロニーに移住し始めて1世紀以上が経った時代だ。
覚えるのはたった3つ。
① 地球連邦政府が腐敗している
もともとは人口増加や環境問題のために宇宙移住を進めていたはず。でも実際には地球は特権階級だけが住める場所になり、宇宙に住む人々(スペースノイド)への差別と圧政が続いている。「地球居住の特例法案」──政府が認めた人だけが地球に住めるという法案まで出てくる始末。
この設定は、富野由悠季が1989年に原作小説を書いた当時から既に存在していた。だが、2026年の今、難民・移民問題が世界中で深刻化している現代において、この設定は驚くほど予言的に響く。
② 「マフティー」という反政府組織がある
この理不尽に怒った人たちが、政府閣僚の暗殺という過激な方法で抵抗している組織。正式名称は「マフティー・ナビーユ・エリン」。学生運動のようなテロ組織で、若者が多い。そのリーダーが主人公ハサウェイ。
「マフティー」という名前は、アイルランド神話の英雄に由来する。富野作品では、こうした神話的・文学的な引用が随所に散りばめられており、単なるロボットアニメとは一線を画している。
③ モビルスーツ=巨大ロボット兵器
ガンダムシリーズおなじみの人型兵器。ハサウェイは「Ξ(クスィー)ガンダム」という最新鋭機に乗る。反重力で空を飛べるすごいやつ。
従来のモビルスーツは宇宙空間や地上を二足歩行で移動していたが、Ξガンダムはミノフスキー・クラフトという技術で「空を飛ぶ」ことができる。これにより、戦闘シーンは従来のガンダム作品とは一線を画す、まるでジェット戦闘機のような高速戦闘が展開される。

主人公ハサウェイ・ノアの過去(これが超重要)
『閃光のハサウェイ』を理解するには、ハサウェイがなぜテロリストになったのかを知っておく必要がある。
ハサウェイは英雄の息子
父はブライト・ノア。初代ガンダムから登場する連邦軍の伝説的艦長で、19歳で艦長代理を務めた歴戦の軍人。ガンダムファンにとってはお父さんのような存在だ。
ブライトは、宇宙世紀を代表する英雄アムロ・レイとともに、一年戦争、グリプス戦役、第一次ネオ・ジオン抗争など、数々の戦争を戦い抜いた。その息子であるハサウェイには、常に「英雄の息子」という重圧がのしかかっていた。
13歳のトラウマ
宇宙世紀93年、「シャアの反乱」と呼ばれる事件が起きる。シャア・アズナブルが地球に小惑星を落として人が住めなくしようとした。これを阻止する戦いに、13歳のハサウェイは巻き込まれる。
この戦場で、ハサウェイが好意を抱いていた少女クェス・パラヤが死亡。さらにハサウェイは、そのクェスを撃ったチェーン(父の仲間であり、英雄アムロの恋人)を衝動的に殺してしまう。
味方を、しかもアムロの恋人を自分の手で殺してしまった──この罪を隠したまま12年間生きてきた。それがハサウェイだ。
ここに『閃光のハサウェイ』という物語の本質がある。 13歳の少年が、戦場で理性を失い、取り返しのつかない過ちを犯してしまった。その罪を誰にも告白できず、ただ胸の奥に抱え続けて大人になった。
富野由悠季の作品は、しばしば「少年が戦争に巻き込まれ、心に傷を負う」というテーマを描く。初代ガンダムのアムロ、『機動戦士Zガンダム』のカミーユ、『機動戦士ガンダムZZ』のジュドー──いずれも、戦争が少年の心を壊していく様を描いている。
ハサウェイは、その系譜の中で最も「取り返しのつかない過ち」を犯した少年だ。
テロリストへの道
その後うつ病を経験し、植物監察官として地球環境の研究に携わる。その中で、地球に住めるのは特権階級だけという理不尽を目の当たりにする。シャアの「地球を守るべき」という思想に共感していき、裏の組織「マフティー」に接触される。
自分の犯した罪への贖罪、地球環境への危機感、特権階級への怒り──複数の動機が重なり、テロ組織のリーダーへと進んでいく。
ハサウェイは「正義のヒーロー」ではない。 彼は自分の行動が正しいとは思っていない。ただ、何もしないよりはマシだと信じて、罪を重ねている。
この「確信のない正義」こそが、『閃光のハサウェイ』を単純な勧善懲悪のロボットアニメとは一線を画す作品にしている。
なぜ今、『閃光のハサウェイ』が新規ファンを獲得できているのか
ガンダムシリーズは、長年「オタク向け」「設定が複雑すぎる」というイメージがあった。だが『閃光のハサウェイ』は、そのイメージを覆して新規ファンを大量に獲得している。なぜか?
① 移民・難民問題という現代的テーマ
原作小説の中巻では、「移民の取り締まりが苛烈を極めていることに反発」がハサウェイの動機として描かれる。
富野由悠季が1989年にこの設定を書いたとき、まだ世界は冷戦の終結を迎えたばかりだった。だが2026年の今、ヨーロッパの難民問題、アメリカの移民政策、日本の外国人労働者受け入れ問題──世界中で「誰が地球に住む権利があるのか」という問いが現実のものになっている。
『閃光のハサウェイ』は、SF作品でありながら、極めて現代的な社会問題を描いている。だからこそ、ガンダムを一度も観たことがない人でも、この物語に共感できるのだ。
② 正義と悪の二元論を超えた複雑な人間ドラマ
ハサウェイは「正義の味方」ではない。彼は政府閣僚を暗殺するテロリストだ。一方、彼を追うケネス・スレッグは「悪の組織の幹部」ではない。彼もまた、組織の圧力に苦しみ、自分の正義を模索している。
現代の観客は、単純な勧善懲悪の物語に飽きている。『閃光のハサウェイ』は、誰もが正しくて、誰もが間違っている──そんな複雑な人間ドラマを描いている。
③ 「英雄の息子がテロリスト」という逆説的な物語構造
従来のガンダム作品では、主人公は「正義のために戦うパイロット」だった。だが『閃光のハサウェイ』は、「英雄の息子がテロリストになる」という逆説的な物語だ。
これは、現代の「二世」問題とも重なる。親が偉大だからこそ、子はその期待に押しつぶされる。ハサウェイは、父ブライトのような「正しい道」を歩めなかった。だからこそ、彼は自分なりの「正義」を模索する。
この物語は、誰もが抱える「親の期待」と「自分の生き方」の葛藤を描いている。

富野由悠季という作家の思想性
『閃光のハサウェイ』を語る上で、原作者・富野由悠季の思想を理解することは欠かせない。
なぜ原作小説を1989-90年に書いたのか
1989年は、富野にとって転換点だった。同年、劇場アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が公開され、富野は「これでガンダムは終わり」と考えていた。
だが、その「終わり」の先に何があるのか? アムロとシャアという英雄たちが去った後、次の世代は何を背負うのか?
『閃光のハサウェイ』は、その問いへの答えとして書かれた。ハサウェイは、アムロやシャアのような「絶対的な正義」を持たない。彼は迷い、葛藤し、それでも前に進もうとする。
当時のテーマが今なお普遍的である理由
富野由悠季の作品は、しばしば「時代を先取りしすぎている」と言われる。
1979年の『機動戦士ガンダム』は、ロボットアニメでありながら、戦争の悲惨さと人間の愚かさを描いた。1985年の『機動戦士Zガンダム』は、エコロジーとニュータイプ思想を描いた。1988年の『逆襲のシャア』は、環境テロリズムを描いた。
そして1989年の『閃光のハサウェイ』は、移民問題と世代間継承を描いた。
これらのテーマは、すべて2026年の今も、いや今こそ切実な問題として私たちの前にある。
富野作品における「世代間継承」の系譜
富野作品のもう一つの大きなテーマが「世代間継承」だ。
初代ガンダムでは、少年アムロが戦争に巻き込まれ、大人たちの戦いを継承していく。『Zガンダム』では、アムロの次の世代であるカミーユが新たな戦いを背負う。そして『閃光のハサウェイ』では、ブライトの息子ハサウェイが、父とは違う道を選ぶ。
親の世代が成し遂げられなかったこと、あるいは間違ったことを、次の世代はどう受け継ぐのか? これが、富野由悠季が一貫して問い続けてきたテーマだ。

主要キャラ3人
ハサウェイ・ノア(25歳)
表の顔は植物監察官。裏の顔はマフティーのリーダー。正義のために戦いながらも、過去の罪と矛盾に苦しむ青年。
彼の声を演じる小野賢章は、第1部から一貫してハサウェイの繊細さと強さを表現している。特に、第2部では精神的に追い詰められていくハサウェイの内面を、声のトーンや間の取り方で見事に演じている。
ギギ・アンダルシア(21歳)
大富豪バウンデンウッデン伯爵の愛人。一見少女のようだが、初対面でハサウェイの正体を見抜くほど鋭い洞察力を持つ。
タイトルの「キルケーの魔女」はギリシャ神話の男を翻弄する魔女のことで、ギギを指しているとも言われている。ハサウェイとケネスの両方に関わり、物語を大きく動かすキーパーソン。
ケネス・スレッグ(30代)
地球連邦軍大佐。マフティー討伐の新司令官として着任。スマートなプレイボーイに見えるが、拷問を楽しむ一面や、組織内の圧力に苦しむ姿も描かれる。ギギの洞察力に惹かれ「勝利の女神」として側に置こうとする。
ギギ・アンダルシア──「キルケーの魔女」の神話的意味
タイトルにもなっている「キルケーの魔女」とは何か?
ギリシャ神話のキルケー
キルケーは、ギリシャ神話に登場する魔女。太陽神ヘリオスの娘で、魔法と薬草の知識に長けている。ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』では、英雄オデュッセウスの仲間を豚に変えてしまう。
だが、キルケーは単なる「悪の魔女」ではない。彼女はオデュッセウスに恋をし、彼を1年間自分の島に留める。そして最終的には、オデュッセウスが故郷に帰る手助けをする。
キルケーは、男を翻弄する存在でありながら、同時に男を救う存在でもある。
ギギは「魔女」なのか「女神」なのか
ギギは、ハサウェイとケネスという2人の男に大きな影響を与える。
ハサウェイにとって、ギギはクェスの面影を思い起こさせる存在だ。彼女の言葉は、ハサウェイの心を揺さぶり、時に迷わせる。
ケネスにとって、ギギは「勝利の女神」だ。彼は、ギギの洞察力を利用してマフティーを追い詰めようとする。
だが、ギギ自身は何を望んでいるのか? 彼女は富裕層の安全な生活を捨てて、命の危険があるテロリストの元へ向かう。その選択は、「魔女」の気まぐれなのか、それとも「女神」の導きなのか。
ギギというキャラクターは、観客に解釈を委ねられている。 彼女を「運命を変える魔女」と見るか、「男を救う女神」と見るか──それは観客次第だ。
前作(第1部)で何が起きた?
第2部から観ても楽しめるが、前作を観ておくと3人の関係性がより深く刺さる。
– ハサウェイは閣僚たちの顔を見ようと特別便に乗り込む。そこでハイジャック事件に巻き込まれ、偶然にもギギとケネスに出会ってしまう
– ハサウェイは仲間と合流し、空中で新型モビルスーツΞガンダムを受領
– 連邦軍のペーネロペー(ライバルのレーン・エイム搭乗)との激闘
– 捕虜になった仲間ガウマンを救出して離脱
– 3人の関係が複雑に絡み合ったまま、第2部へ──
前作はAmazonプライムビデオで配信中。観ておくと人間関係がより深く理解できる。
第2部『キルケーの魔女』の見どころ(ネタバレなし)
① 3人がそれぞれ別行動する群像劇
ハサウェイはマフティーの仲間たちとオーストラリアのアデレード(閣僚会議の場所)を目指す。ケネスはギギを連れて別ルートで移動。3人の視点が交互に描かれ、水面下での騙し合いが展開される。
第1部は、3人が偶然同じ場所にいたことで物語が動いた。だが第2部では、3人が離れた場所にいるからこそ、それぞれの思惑が複雑に絡み合う。
② 戦闘シーンの超進化
前作でも話題になったリアルな戦闘描写がさらにパワーアップ。サプライズ登場の新型モビルスーツ「アリュゼウス」や、量産型νガンダム(アニメ初登場!)との超高速戦闘は鳥肌もの。
特に、量産型νガンダムは『逆襲のシャア』でアムロが搭乗したνガンダムの量産型。ハサウェイにとって、このモビルスーツは13歳のトラウマを思い出させる存在だ。
③ ハサウェイの精神的葛藤
量産型νガンダムを見てシャアの反乱のトラウマを思い出すハサウェイ。アムロの幻影との対話シーンは、シリーズ屈指の名場面と評されている。
ハサウェイは、自分が殺してしまったチェーンの恋人・アムロの幻影と対話する。 そこで何が語られるのか──それは、劇場で確かめてほしい。
④ ギギの決断
安全な富裕層の生活を捨て、命の危険があるテロ組織のリーダーの元へ向かうギギ。彼女は「勝利の女神」なのか「運命の魔女」なのか。
ギギの選択は、物語の行方を大きく左右する。彼女がハサウェイの元へ向かう理由は何か? それは、観客それぞれが解釈することになる。
⑤ 音楽が攻めてる
オープニングにSZAの「Snooze」、エンディングにガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet Child O’ Mine」。タイアップ曲ではなく、作品の雰囲気にマッチした既存の名曲を引っ張ってくるセンスが最高。
映像表現の革新性──なぜIMAXで観るべきなのか
『閃光のハサウェイ』シリーズは、ガンダム映画の中でも特に映像表現にこだわっている。
リアリティを追求したメカ描写
従来のガンダム作品では、モビルスーツは「かっこよく動く」ことが重視されていた。だが『閃光のハサウェイ』では、「リアルに動く」ことが重視されている。
Ξガンダムの飛行シーンは、実際のジェット戦闘機の飛行データを参考にしている。空気抵抗、慣性、重力──すべてが計算され、CGで再現されている。
戦争の恐怖を描く演出
『閃光のハサウェイ』の戦闘シーンは、「ロボットかっこいい」ではなく、「戦争のリアルな恐怖」を描いている。
モビルスーツが都市を破壊し、人々が逃げ惑う。巨大な兵器が人間を蹂躙する様は、まるで実写映画のような迫力だ。
IMAXでの没入感
IMAX上映では、床から天井、左右の壁いっぱいに広がるスクリーンにより、まるで映画の中にいるようなリアルな臨場感を体感できる。
特に、Ξガンダムが夜空を飛ぶシーンは、IMAXで観ると圧倒的な没入感がある。通常の映画館では味わえない体験だ。
ドルビービジョン・ドルビーアトモス
通常の500倍のコントラストと驚異的な色域により色鮮やかでリアルな映像を創り出す「ドルビービジョン」と、息をのむほどリアルなサウンドが空間を包み込む「ドルビーアトモス」。
特に戦闘シーンでは、モビルスーツのエンジン音、ビームの発射音、爆発音──すべてが立体音響で再現される。まるで自分が戦場にいるかのような臨場感だ。

音楽の選曲意図──SZAとガンズが物語る感情
『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の音楽選曲は、異例だ。
通常、アニメ映画の主題歌は、タイアップで新曲が書き下ろされる。だが本作は、既存の名曲を使っている。しかも、ガンダムとは全く無関係な洋楽だ。
SZA「Snooze」──離れたくない、という切実な想い
SZAは、アメリカ・ニュージャージー出身のシンガーソングライター。「Snooze」は、アルバム『SOS』(2022年)に収録された大ヒット曲だ。
歌詞の意味は、「恋人への深い愛情と『離れたくない』という切実な想い」。柔らかなメロディと繊細なボーカルで、献身的な愛を歌っている。
この曲は、ハサウェイとギギの関係を象徴している。 ハサウェイは、ギギに惹かれながらも、自分がテロリストであることを隠している。ギギは、ハサウェイの正体を知りながらも、彼の元へ向かう。
2人は「離れるべき」なのに、「離れたくない」。その葛藤が、この曲に重なる。
Guns N’ Roses「Sweet Child O’ Mine」──子供の頃の思い出
ガンズ・アンド・ローゼズは、1980年代を代表するアメリカのロックバンド。「Sweet Child O’ Mine」は、1987年にリリースされた彼らの代表曲だ。
歌詞の意味は、「彼女が見せる笑顔が、子供の頃の思い出を思い起こさせる」。恋人への愛情を、ノスタルジックに歌った曲だ。
この曲は、ハサウェイの過去のトラウマを象徴している。 ハサウェイは、13歳のときに大切な人を失い、取り返しのつかない過ちを犯した。その「子供の頃の思い出」は、彼の心に深い傷として残っている。
ギギの笑顔は、ハサウェイにかつてのクェスの面影を思い起こさせる。だが、その思い出は甘美であると同時に、苦痛でもある。
なぜ既存楽曲を使うのか
通常、アニメ映画は新曲を書き下ろすことで、プロモーション効果を狙う。だが『閃光のハサウェイ』は、あえて既存楽曲を使っている。
それは、作品の世界観に合った楽曲を優先したからだ。
SZA「Snooze」は、ハサウェイとギギの関係を完璧に表現している。Guns N’ Roses「Sweet Child O’ Mine」は、ハサウェイの過去のトラウマを見事に象徴している。
新曲を書き下ろすよりも、既存の名曲を使う方が、作品の世界観に合っている──そう判断したからこそ、この選曲になったのだ。
ガンダムシリーズにおける『閃光のハサウェイ』の位置づけ
ガンダムシリーズは、1979年の初代から45年以上続く長寿シリーズだ。その中で『閃光のハサウェイ』はどのような位置づけなのか?
宇宙世紀0105年という時代設定の意味
ガンダムシリーズは、大きく分けて「宇宙世紀」と「アナザーガンダム」に分かれる。
「宇宙世紀」は、初代ガンダムから続く正史の世界観。『閃光のハサウェイ』は、その宇宙世紀0105年を舞台にしている。
宇宙世紀0079年:初代ガンダム(一年戦争)
宇宙世紀0087年:Zガンダム(グリプス戦役)
宇宙世紀0088年:ZZガンダム(第一次ネオ・ジオン抗争)
宇宙世紀0093年:逆襲のシャア(シャアの反乱)
宇宙世紀0105年:閃光のハサウェイ ← ここ
つまり、『閃光のハサウェイ』は、初代ガンダムから26年後の世界を描いている。
『逆襲のシャア』からの繋がり
『閃光のハサウェイ』は、『逆襲のシャア』の12年後を描いている。
『逆襲のシャア』では、シャア・アズナブルが地球に小惑星を落とそうとし、アムロ・レイがそれを阻止した。だが、2人とも行方不明になり、生死不明のまま物語は終わる。
ハサウェイは、その戦場に居合わせた。そして、アムロの恋人チェーンを殺してしまった。
『閃光のハサウェイ』は、『逆襲のシャア』の「その後」を描いた作品だ。 シャアとアムロという英雄が去った後、次の世代は何を背負うのか。それがこの物語のテーマだ。
シャアの思想の継承と変容
シャア・アズナブルは、『逆襲のシャア』で「地球を人間の手から解放する」ために、小惑星を落とそうとした。
ハサウェイは、シャアの思想に共感している。だが、ハサウェイの方法はシャアとは違う。ハサウェイは、地球を破壊するのではなく、地球を支配する特権階級を暗殺しようとしている。
ハサウェイは、シャアの思想を「継承」しながらも、「変容」させている。 シャアは地球そのものを破壊しようとした。だが、ハサウェイは地球を守りたいと思っている。ただ、その方法が「テロ」なだけだ。
第3部への展望──ハサウェイの運命は
『閃光のハサウェイ』は全3部作。第2部『キルケーの魔女』の次には、第3部が控えている。
原作小説のラスト(ネタバレなし)
原作小説では、ハサウェイの物語は悲劇的な結末を迎える。
詳しくは言えないが、ハサウェイは「英雄の息子」として生まれ、「テロリスト」として生き、そして──。
富野由悠季の作品は、しばしばハッピーエンドでは終わらない。『機動戦士ガンダム』のアムロは、最終的にシャアと共に行方不明になる。『Zガンダム』のカミーユは、精神崩壊を起こす。
『閃光のハサウェイ』も、おそらくハッピーエンドでは終わらないだろう。
第3部の公開時期
第1部が2021年公開、第2部が2026年公開。つまり、約5年の間隔がある。
第3部がいつ公開されるかは不明だが、おそらく2030年前後になるだろう。それまでに、ハサウェイの運命を想像しながら待つのも、ファンの楽しみだ。
観客が期待するもの
第3部では、ハサウェイとギギの関係がどうなるのか、ケネスとの対決がどう決着するのか、そしてハサウェイの運命はどうなるのか──すべてが明らかになる。
原作小説を読んだファンは、「あのラストをどう映像化するのか」と固唾を呑んで待っている。
原作を読んでいないファンは、「ハサウェイはどうなるんだ」と不安と期待で胸をいっぱいにしている。
第3部は、間違いなくガンダムシリーズ史上最も重要な作品になるだろう。
ガンダム初心者へのアドバイス
最後に、ガンダムを一度も観たことがない人へのアドバイス。
「ロボットアニメでしょ?」という先入観は捨てていい
『閃光のハサウェイ』は、ロボットアニメではない。政治スリラー+三角関係のヒューマンドラマだ。
ロボットは出てくるが、あくまで「兵器」として描かれている。主役は人間だ。
実態は政治スリラー+三角関係のヒューマンドラマ
ハサウェイ、ギギ、ケネス──3人の複雑な関係性が物語を駆動する。
誰が正しくて、誰が間違っているのか。その答えは、観客それぞれが出すことになる。
戦闘シーンは「ロボットかっこいい」じゃなくて「戦争のリアルな恐怖」寄り
戦闘シーンは、確かにかっこいい。だが、それ以上に「怖い」。
巨大な兵器が人間を蹂躙する様は、戦争映画のような緊張感がある。
IMAXで観ると戦闘シーンの没入感が段違い
可能なら、IMAX上映で観てほしい。通常の映画館とは全く別次元の体験ができる。
前作→キルケーの魔女の順がベストだけど、本作からでも雰囲気は十分楽しめる
第1部を観ておくと、3人の関係性がより深く理解できる。だが、第2部から観ても十分楽しめる。
第2部だけ観て、「面白かった!」と思ったら、第1部を観て、さらに深く世界観を楽しむのもアリだ。
英雄の息子がテロリストになる物語。それだけで興味が湧いたら、もう観に行っていい
「ガンダムって設定が複雑そう」「予習が必要そう」──そんな不安は要らない。
「英雄の息子がテロリストになる」という一文に興味が湧いたなら、もう観に行っていい。
まとめ:話題になっている今こそ、ガンダムデビューするチャンス
公開5日で10億円突破。SNSでは連日話題になっている。
「ガンダムって難しそう」と敬遠していた人も、今なら周りに観た人がたくさんいる。感想を語り合える相手がいる。
話題になっている今こそ、ガンダムデビューするチャンスだ。
劇場で、ハサウェイの葛藤を、ギギの魔性を、ケネスの苦悩を──その目で確かめてほしい。
そして、エンドロールが流れるとき、Guns N’ Rosesの「Sweet Child O’ Mine」が響くとき、きっとあなたはこう思うだろう。
「ガンダムって、こんなに深かったのか」と。

