どうも、なすです。今回は2026年1月30日にSteamでリリースされたアドベンチャーゲーム『黒洞々|KOKUTOTO』をプレイしてきたので、その感想を書いていくよ。
開発はテンダゲームス。「トライアングルストラテジー」のシナリオディレクションや「AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ」の捜査パート実装を手がけた実績のあるデベロッパーが、あえて小規模タイトルで現代社会の暗部に切り込んできた意欲作なんだよね。

目次
歌舞伎町を「羅生門」に見立てた世界観がヤバい
本作の舞台は「東京辺獄一番街」というエリア。要するに歌舞伎町をモデルにしたきらびやかな歓楽街なんだけど、これが芥川龍之介の「羅生門」のメタファーになっているのがマジで面白い。
「羅生門」って、平安京の朱雀大路の最南端にあった門で、末期には修繕もされず、身寄りのない死体の捨て場になっていたという場所。本作ではこのきらびやかなゲートが、追い詰められた人々が身を寄せる街の入り口として機能しているわけ。この設定だけでもう引き込まれる。

「尊厳」がタイムリミットになるシステムが秀逸
主人公の「男」の胸には奇妙な穴が空いていて、そこから「尊厳」が絶え間なく流れ出している。画面上部にバーで表示されるこの尊厳がゼロになると死を迎えるっていう設定なんだけど、これがゲームシステムとしてめちゃくちゃよくできてるんだよね。
面白いのが、良いことでも悪いことでも「決断」を下すたびに尊厳が少し回復するっていう仕組み。何事も決断しなければ始まらないし、それは人に力を与えてくれるっていうメッセージが、ゲームプレイに自然と組み込まれている。

決断するためには街の住人たちとの会話で「心得」を集めて、「善悪の彼岸」を超える必要がある。ゲーム的に言えば、各地で手がかりを集めてロックされた選択肢を解放していく感じ。ペナルティもないので気楽にプレイできるのは嬉しいポイント。

登場人物全員が「歪んだ優越感」を持っているのがリアルすぎる
この街で出会うのは、医者、闇金、ヤクザ、配信者、宗教家といった12人の住人たち。彼らとの対話がまたエグいんだよね。どれも「それっぽく」聞こえるんだけど、言葉の端々から他者への歪んだ優越感が隠しきれない。
で、本当に面白いのはここからで。主人公の受け答えや決断時の独白もまた、意図的に「浅い」ように感じる。相手を勝手に決めつけて偏見を隠そうともしない主人公にも、ある種の歪んだ優越感が宿っているんだよね。

そしてそうやって物語の構造を分析している僕や、「なるほど」と読んでいるあなたも、果たして「善良な人間」と言えるのか? 誰かの愚かさを指摘して悦に浸っている時点で、僕らもこのシステムの歪みを肯定している側なんじゃないか……。こういうプレイヤー自身を巻き込んでくる構造がマジでガチ芥川。
泥沼だけど、最後に残る「晴れ晴れとした何か」
正直に言って救いはない。行き倒れから金を奪い、その金で医者に頭を下げ、クスリを買って命をつなぐ。盗んだバッグをネタにヤクザから強請られ、配信者の承認欲求の餌食にされる。読み進めても明るい気分にはなれない。

でも、最後まで終えてどん底まで突き抜けた先には、不思議と晴れ晴れとした何かが残った。これは実際にプレイしてみないとわからない感覚だと思う。
周回プレイが超快適!エンディングは全13種類
殺伐とした話の一方で、ゲームシステムは驚くほど優しい。エンディングは全13種類用意されていて、収集した「心得」は周回プレイ時に引き継ぎ可能。一度条件を満たせば「彼岸の門」の演出すらスキップできる。

とことんプレイヤーの負担を減らそうとする現代的な設計で、テキストアドベンチャーが苦手な人でもサクサク遊べるはず。コンパクトな作品だからこそ、気軽に全エンディングを回収できるのも嬉しい。
まとめ:芥川龍之介への愛が詰まった知的アドベンチャー
羅生門が描いた平安朝末期の飢餓、芥川がそれを綴った第一次大戦後の不況、そして現代日本。時代は変われど「人間のリアル」は変わらない。本作はそれを弁護するわけでも断罪するわけでもなく、ただそこに「ある」ものとして静かに置いてみせる。
だからこそ僕は本作から、芥川龍之介やその作品群に対する確かな愛を感じた。文学好きはもちろん、「ちょっと変わったアドベンチャーゲームを遊びたい」って人にはマジでおすすめ。Steam価格もお手頃だし、ぜひ一度触ってみてほしい。
ゲーム情報
- タイトル:黒洞々|KOKUTOTO
- プラットフォーム:PC(Steam)
- 開発:テンダゲームス
- リリース日:2026年1月30日
- ジャンル:アドベンチャー
- プレイ人数:1人


