どうも、なす(@nasuyowa)です。漫画漬けの日々を送っています。
マンガ大賞2017の大賞は、柳本光晴先生の『響~小説家になる方法~』(67pt)でした。2位・3位との差もわずかで、本当に粒ぞろいの年でした。この記事では、最終結果13作品の一覧に加えて、各作品のあらすじや見どころ、現在どこまで刊行が進んだのかをまとめています。
ノミネート当時は「単行本8巻まで」という条件がついたフレッシュな作品ばかりでしたが、現在は大半の作品が完結を迎えました。中には『ダンジョン飯』や『約束のネバーランド』のように、世界的なヒット作へと成長した作品も並んでいます。
多くの作品を結末まで一気に読める状態になっているので、次に読む漫画を探す参考にしてみてください。

マンガ大賞とは?

マンガ大賞は、書店員を中心とした有志の選考員が「今、誰かに薦めたい面白いマンガ」を投票で決める賞です。2008年に創設され、運営はマンガ大賞実行委員会のボランティアによって支えられています。現場で漫画に寄り添う書店員さんたちの目利きから始まった賞で、2017年の授賞式はニッポン放送の本社ビルで開催されました。
大きな特徴は、選考対象をフレッシュな作品に絞っている点です。前年の1月1日から12月31日までに単行本が出版された作品のうち、最大巻数が8巻までのもの(電子書籍も含む)に限られます。巻数が長く続いている有名作はすでに魅力が世間に届いているという考えから、これから手に取りやすい初期の作品が選ばれる仕組みです。
一次選考では、選考員が「人に薦めたい作品」を最大5作ずつ投票し、得票数の多かった上位作品がノミネートされます。
続く二次選考では、選考員がノミネート作をすべて読んだ上で1位から3位までを投票。1位=3pt、2位=2pt、3位=1ptとして集計し、合計得点が一番高かった作品が大賞に選ばれます。漫画家や編集者といった売上に直接関わる関係者は選考員になれないルールになっており、この公平性こそが賞の信頼感を支えています。
マンガ大賞2017の最終結果一覧

マンガ大賞2017は2017年3月28日に結果が発表されました。対象となったのは2016年に単行本が発売された作品です。一次選考には94名が参加して248タイトルに投票があり、二次選考の89名による投票で最終順位が決定しました。同率順位を含めたノミネート作品は全13作です。
| 順位 | 作品 | 作者 | 得点 |
| 1位 | 響~小説家になる方法~ | 柳本光晴 | 67pt |
| 2位 | 金の国 水の国 | 岩本ナオ | 64pt |
| 3位 | ダンジョン飯 | 九井諒子 | 63pt |
| 4位 | アオアシ | 小林有吾/取材・原案協力:上野直彦 | 60pt |
| 5位 | 波よ聞いてくれ | 沙村広明 | 48pt |
| 6位 | 約束のネバーランド | 出水ぽすか・白井カイウ | 43pt |
| 7位 | ゴールデンゴールド | 堀尾省太 | 42pt |
| 8位 | ファイアパンチ | 藤本タツキ | 37pt |
| 9位 | ハイスコアガール | 押切蓮介 | 33pt |
| 10位 | からかい上手の高木さん | 山本崇一朗 | 30pt |
| 11位 | 私の少年 | 高野ひと深 | 20pt |
| 12位 | 東京タラレバ娘 | 東村アキコ | 18pt |
| 13位 | 空挺ドラゴンズ | 桑原太矩 | 9pt |
上位3作の得点差はわずか数ポイントでした。1位の『響~小説家になる方法~』が67pt、2位の『金の国 水の国』が64pt、3位の『ダンジョン飯』が63ptと、最後までもつれ込む大接戦になっています。
顔ぶれを見ると、少年誌(『約束のネバーランド』『ファイアパンチ』)、青年誌(『響』『アオアシ』『波よ聞いてくれ』『ゴールデンゴールド』『私の少年』『空挺ドラゴンズ』)、少女誌・女性誌(『金の国 水の国』『からかい上手の高木さん』『東京タラレバ娘』)と、掲載媒体のジャンルも多彩です。特定の好みに偏らず、良質な作品が幅広く拾い上げられた年でした。
それでは、ノミネートされた13作品を順番に見ていきましょう。それぞれのあらすじと見どころ、現在の刊行状況や映像化の動きもあわせて紹介します。
1位『響~小説家になる方法~』柳本光晴(67pt)

とある文芸編集部の新人賞宛てに届いた、一通の直筆投稿原稿。応募条件を満たしていなかったため破棄されるはずだったその原稿を、編集部員の花井ふみが偶然見つけたところから物語が動き出します。
原稿を書いたのは、15歳の女子高生・鮎喰響。圧倒的な文才を持ちながら、大人の建前や社会の常識には一切媚びない彼女が、文芸界の空気を激しく揺さぶっていく作品です。周囲に忖度せず、書きたいものを書き、思ったことをそのまま言葉にする響。彼女と関わった人々や文芸界全体が、その才能によって大きく変化していきます。
「天才」を主役に据えた作品はたくさんありますが、響の魅力は才能を行動で証明し続ける苛烈さにあります。
大人が理屈や都合で固めてきた世界を、響が真正面からぶち壊していく姿は読んでいて胸がすくほど痛快です。同時に、彼女の圧倒的な才能を目の当たりにして価値観を狂わされる編集者や、同世代の作家たちのリアルな葛藤も逃げずに描かれます。単なるご都合主義の快進撃には終わらない人間臭さがあります。
響の作家としての軌跡を軸にしながら、新人賞選考の裏側や出版業界のリアルな熱量、ライバルたちの苦悩まで、文芸の世界の内側を覗き込める構成も見事です。
作品は全13巻で完結しています。ビッグコミックスペリオールで連載され、最終13巻は2019年11月29日に発売されました。2018年9月14日には平手友梨奈さん主演の実写映画『響 -HIBIKI-』も公開されています。
天才少女のドラマとしても、出版業界を描くお仕事漫画としても読みごたえのある仕上がりです。全13巻という長さも、長すぎず短すぎず、休日にまとめて一気読みするのにぴったりのボリューム感だと思います。
劇中に登場する小説の描写や、編集部を取り巻く人間ドラマにも厚みがあります。本や活字の世界が好きな人には特に刺さりやすい作品です。

ポチップ
2位『金の国 水の国』岩本ナオ(64pt)

昔々、隣り合う仲の悪い2つの国がありました。水以外なら何でも手に入る裕福な商業国家「金の国」と、豊かな水と緑に恵まれながら貧しい「水の国」。両国の仲裁に入った神様の言いつけにより、金の国の王女サーラと、水の国の建築士ナランバヤルは偽りの結婚を命じられ、それぞれの国の思惑に巻き込まれながら夫婦のふりをすることになります。
岩本ナオ先生の柔らかな描線とあたたかいファンタジーの世界観に、昔話のような嫁婿ものの王道が重なった心地よい読み味です。
国同士が憎み合う険悪な空気の中で、不器用な2人がついた優しい嘘が少しずつ外交を動かしていきます。「敵国同士」という設定ですが殺伐とした重苦しさはなく、相手を思いやる小さな嘘がやがて国全体の未来を変えていく結末まで、一気に読ませてくれます。国家間のシビアな対立と、2人のコミカルで温かいやり取りのバランスが絶妙です。
本作は全1巻(単巻)で綺麗に完結しています。2016年7月8日に小学館のフラワーコミックスαスペシャルから発売されました。2023年1月27日にはマッドハウス制作の劇場アニメ映画が公開され、賀来賢人さんと浜辺美波さんが主演声優を務めたことでも話題になりました。たった1冊で過不足なくまとまっているので、手軽に完成度の高い物語を読みたい人にも向いています。
マンガ大賞2017では3ポイント差で惜しくも2位でしたが、選考員からも物語としての美しさが絶賛されていました。国境を越えたロマンスが好きな人はもちろん、優しい人間ドラマに浸りたい人にも文句なしでおすすめできる傑作です。

ポチップ
3位『ダンジョン飯』九井諒子(63pt)

ハルタ(KADOKAWA)で連載されたファンタジー作品です。迷宮の深層でレッドドラゴンに妹を食べられ、身ぐるみも食料も失ってしまった冒険者のライオス一行。このままでは途中で飢え死にしてしまうという極限状態の中、ライオスは「倒した魔物を食べて自給自足する」という決断を下します。
スライム、バジリスク、ミミック、そして巨大なドラゴン。襲い来る魔物を調理して味わいながら迷宮の奥を目指す、異色のグルメファンタジーです。
「魔物を食べる」という突飛なアイデアだけで終わらないのが、この作品の底力です。モンスターの生態や筋肉の付き方、解体方法や味付けまで、現実の生物学や料理の知見をベースに緻密に組み立てられています。読み進めるうちに、妹の救出だけでなく「狂乱の魔術師」の正体やダンジョンそのものの成り立ちといった壮大な謎が絡み合い、骨太な冒険譚へと深化していきます。料理漫画のワクワク感と、先が読めないファンタジーの醍醐味が見事に融合した作品です。
コミックスは全14巻で完結しています。最終14巻は2023年12月15日に発売されました。TRIGGER制作によるテレビアニメが2024年1月から連続2クールで放送され、続編の『ダンジョン飯 Season2』は2027年10月からの放送が決まっています。原作はすでに完結しているため、アニメから入った人でも結末までストレスなく一気に読み通せます。
「このマンガがすごい!」をはじめ数々の漫画賞で上位に選ばれた実績があり、「食べる」という行為を通じてキャラクターの生き様や世界の循環を描いた名作です。アニメ化で知名度も一気に跳ね上がりました。細部まで作り込まれた世界観を楽しみたい人や、ファンタジーとグルメの組み合わせが好きな人にはたまらないはずです。

ポチップ
4位『アオアシ』小林有吾・取材・原案協力:上野直彦(60pt)

週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載された本格サッカー漫画です。愛媛で暮らす中学3年生の青井葦人(アシト)。粗削りながら強烈な才能を秘めたアシトの前に、Jリーグの強豪クラブ「東京シティ・エスペリオン」のユース監督・福田達也が現れ、セレクションの受験を持ちかけます。こうしてアシトは、プロを目指す高校生たちが集うJユースの厳しい世界へ飛び込みます。
「最初から主人公が無双する」タイプの作品ではありません。フィールド全体を俯瞰できる「視野の広さ」という天性の武器を持ちつつも、基礎技術や戦術の知識はまったくの未熟。そんなアシトが、指導者や仲間との関わりを通じて一段ずつ壁を乗り越えていく過程が泥臭く描かれます。
サッカー経験者が納得する実践的な戦術論と、詳しくない読者でも熱くなれる青春劇のバランスが評価され、小学館漫画賞も受賞しました。ユース内での昇格争い、ポジション変更の苦悩、ライバルたちの挫折と成長まで含めて丁寧に描かれ、話が進むほど視座が広がっていきます。
単行本は全40巻で完結しています。最終40巻は2025年8月29日に発売され、出版社の紹介文でも「大ヒットサッカーコミック、堂々完結」「万感の最終巻」と告知されました。テレビアニメは2022年4月からNHK Eテレで放送され、続編の『アオアシ Season2』は2026年10月4日から放送予定です。全40巻と堂々たる長編ですが、すでに完結しているので最後まで一気に読み切ることができます。
ユース年代の育成現場をリアルに描いた漫画として、サッカー関係者の間でも大きな話題になりました。熱いスポーツ漫画を読みたい人はもちろん、組織やチームの中で自分の居場所を見つけていく成長物語が好きな人にも自信を持っておすすめします。


ポチップ
5位『波よ聞いてくれ』沙村広明(48pt)

物語の舞台は北海道・札幌。スープカレー屋で働く20代独身の鼓田(こだ)ミナレは、酒場で知り合った地元ラジオ局のディレクターに失恋の恨み節を炸裂させます。ところが翌日、その愚痴が生放送で無断オンエアされてしまいます。激怒してラジオ局へ乗り込んだミナレでしたが、ディレクターに言いくるめられてマイクの前に座らされ、ぶっつけ本番で弁明トークを繰り広げることに。その喋りのキレを見込まれ、深夜のラジオパーソナリティとしてスカウトされます。
『無限の住人』で知られる沙村広明先生がラジオ業界を描く群像劇です。深夜ラジオの番組作りを軸に、ミナレを取り巻くアクの強い人物たちの人生が複雑に絡み合って進んでいきます。マシンガンのように繰り出されるセリフ回しと、どこに着地するか分からない予測不能なストーリー展開が持ち味。ギャグとシリアスの落差の激しさが、他にはない読み応えを生んでいます。
単行本は既刊13巻で、月刊アフタヌーンにて連載中です。最新13巻は2026年8月21日に発売されました。2020年にはサンライズ制作でテレビアニメが放送され、2023年には小芝風花さん主演でテレビドラマ化もされています。現在も物語が進行している作品なので、新刊の発売を待ちながらリアルタイムで追う楽しみがあります。沙村先生の描く個性的な人間模様を堪能したい人にもぴったりです。
ミナレの圧倒的な喋りの勢いと、札幌のリアルな街の空気が独特のグルーヴを生み出しています。ドタバタ劇の合間に仕事への向き合い方や大人のほろ苦さが滲む構成になっており、ラジオ好きはもちろん、地方都市を舞台にしたお仕事ものが好きな人にもよく合います。

ポチップ
6位『約束のネバーランド』出水ぽすか・白井カイウ(43pt)

母と慕う彼女は、親ではない。共に暮らす彼らは、兄弟ではない。孤児院「グレイス=フィールドハウス」で平穏に暮らしていたエマ、ノーマン、レイの3人。ある日彼らは、施設を出ていったはずの仲間を見送った直後、孤児院が実は「鬼に食料として差し出す食用児を育てる農園」だったという恐ろしい真実を目撃してしまいます。子供たち全員を連れて施設からの脱出を目指す、サスペンス作品です。
週刊少年ジャンプの連載作でありながら、力技のバトルではなく知略と駆け引きで物語を転がしていく展開が大きな衝撃を与えました。
「このマンガがすごい!」や小学館漫画賞を受賞し、全世界累計発行部数は2,400万部を超える大ヒットを記録しています。ジャンプ作品としては珍しいサスペンス主軸の構成が、幅広い世代の読者を引き込みました。序盤の孤児院脱獄編の張り詰めた緊張感はもちろん、外の世界へ踏み出したあとの世界の広がりも含めて、最後まで伏線が練り込まれた物語です。
脱獄を果たしたあとは世界全体の成り立ちに迫っていき、人間と鬼の歴史や共存という大きなテーマへと物語が発展していきます。
単行本は全20巻で完結しています。最終20巻は2020年10月2日に発売されました。テレビアニメはSeason 1(2019年)とSeason 2(2021年)が放送され、2020年12月18日には浜辺美波さん主演の実写映画も公開されています。全20巻で綺麗にまとまっているので、先の気になる展開を最後まで一気に駆け抜けることができます。
少年漫画の友情や希望を土台にしつつ、緻密な脱獄サスペンスとして展開した構成力が高く評価されました。知恵を絞り合う頭脳戦や、仲間との強い絆を描く作品が好きな人なら間違いなく夢中になれるはずです。

ポチップ
7位『ゴールデンゴールド』堀尾省太(42pt)

福の神の伝説が残る瀬戸内の小さな島・寧島(ねいじま)で暮らす中学2年生の少女、早坂琉花。東京へ引っ越してしまう片思いの同級生を島に残したいと願った琉花が、浜辺で拾った奇妙な置物を山の祠に供えたところ、異様な姿をした「フクノカミ」が現れます。少女の純粋な願いをきっかけに、島全体へ金と人間の欲望が集まり始めるサスペンスホラーです。
名作『刻刻』の堀尾省太先生らしく、穏やかだった日常がじわじわと怪異に浸食されていく不気味さが際立っています。
小さな島という閉鎖空間に「福の神」が異常な繁栄をもたらし、それに伴って島民たちの倫理観や人間関係が変質していく過程が生々しく描かれます。単なるオカルトにとどまらず、商売の仕組みやお金への執着といった経済の側面が絡んでくるのが独特の面白さです。民間伝承と現代の人間の生々しい欲を結びつけた構成は、上質なミステリとしても楽しめます。
単行本は既刊9巻で、月刊モーニングtwoにて連載中です。最新9巻は2021年11月22日に発売されました。まだ完結は迎えていないため、じっくりと刊行の続きを待ちながら読むタイプの作品です。一コマごとの情報量が多く心理描写も濃密なので、じっくり腰を据えて読みたい人に向いています。
愛嬌と気味の悪さが同居する「フクノカミ」の造形や、のどかな島の景色に漂う嫌な緊張感が印象に残ります。怪異の怖さだけでなく、急速な富の膨張に呑まれていく人間の業を描いた重厚なストーリーを求めている人におすすめです。

ポチップ
8位『ファイアパンチ』藤本タツキ(37pt)

「氷の魔女」によって雪と飢餓と狂気に覆われた終末世界。人々が「祝福」と呼ばれる異能に恵まれたり翻弄されたりする環境で、アグニの過酷な旅が始まります。
驚異的な肉体再生能力を持つ少年アグニは、ベヘムドルク王国の兵士ドマが放った「対象が燃え尽きるまで消えない炎」によって村を焼き払われ、自身も炎に包まれます。肉体が燃え尽きるそばから再生を繰り返す地獄のような苦痛の中、8年もの間耐え続けて炎を制御したアグニは、ドマへの復讐を果たすため歩み出します。
第1話の凄まじい衝撃から始まり、極限のシリアスの中に不意に差し込まれるブラックユーモア、そして話が進むごとに作品のジャンル自体が変貌していく先読み不能のドライブ感が特徴です。過激な描写や常識の外れたキャラクターも多く登場するため人を選びますが、壊れゆく世界で生きる人間を徹底的に描き切った密度の高い作品です。作者の藤本タツキ先生は、本作のあとに『チェンソーマン』を手がけて大ブレイクを果たしました。
絶望的な世界で、周囲から「生きろ」と呪いのように言葉を投げかけられ続けるアグニの姿は、読み進めるほどに重く心へ響きます。
単行本は全8巻で完結しています。少年ジャンプ+で連載され、最終8巻は2018年2月2日に発売されました。全8巻というコンパクトな分量なので、休日に一気に読破するのにも手頃なサイズです。
連載当時は「ジャンプ系列のアプリでとんでもない漫画が始まった」と大きな話題を呼びました。極限状態での人間の狂気や、常識を捨てて突き進む主人公の選択が描かれるため、強烈な読後感を味わいたい人や、藤本タツキ先生の初期衝動に触れてみたい人に向いています。

ポチップ
9位『ハイスコアガール』押切蓮介(33pt)

1991年、2D対戦格闘ゲームの熱狂が巻き起こっていた時代。勉強もスポーツもまるで駄目でゲームだけが生きがいだった少年・ハルオは、場末のゲームセンターで優等生のお嬢様・大野晶に出会います。実は彼女は凄腕のゲーマーでした。ゲームセンターを舞台に繰り広げられる、ゲームと友情と恋を描いたラブコメディです。
『ストリートファイターII』をはじめ実在するゲームが多数登場するのが特徴で、当時のゲーセン文化を肌で知る世代にはたまらない懐かしさがあります。押切蓮介先生特有の不穏な演出がコメディにうまく生かされており、ゲームの知識がなくても惹き込まれる青春ドラマとして完成しています。
コミックスは全10巻で完結しています。月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)で連載され、現在流通している1〜5巻は加筆修正などを施したリニューアル版『ハイスコアガール CONTINUE』として刊行されています。最終10巻は2019年3月25日に発売されました。テレビアニメは2018年に第1期、2019年に第2期『ハイスコアガールII』が放送されました。
ゲーム画面の描写や、100円玉を積み上げて対戦台に向き合う熱気は、当時の空気感そのものです。90年代アーケードゲームの熱いドキュメントとしても、不器用な少年少女の青春漫画としても秀逸な一作です。

ポチップ
10位『からかい上手の高木さん』山本崇一朗(30pt)

ゲッサン(小学館)で連載されていた日常系ラブコメです。中学校の教室で、隣の席の高木さんにいつもからかわれてばかりいる男子・西片。からかい上手な高木さんと、今日こそからかい返そうと奮闘する西片の攻防が物語の中心になります。
あれこれ策を練って高木さんを照れさせようとするものの、手の内を読まれて逆に赤面させられてしまう西片。「照れたら負け」のやり取りが繰り返されますが、ただの意地悪ではなく、微笑ましい好意が隠れているのがポイントです。
劇的な大事件が起こるわけではありませんが、2人の距離が少しずつ近づいていく描写が丁寧で、安心して楽しめます。学校の教室や通学路という誰もが知る身近な舞台だけで物語を成立させており、からかい合いを通じて縮まるもどかしい距離感は幅広い読者に愛されました。
単行本は全20巻で完結しています。最終20巻は2024年1月12日に発売されました。テレビアニメは3期まで放送され、2022年には劇場版アニメも公開。さらに2024年3月には実写ドラマが放送され、同年5月31日には実写映画が劇場公開されるなど、メディア展開も大きく広がりました。
授業中や放課後といった何気ない日常の風景が積み重なっていく作品なので、穏やかに癒やされたい人に向いています。長く親しまれたシリーズで、大人になった2人を描くスピンオフ『からかい上手の(元)高木さん』も刊行されています。


ポチップ
11位『私の少年』高野ひと深(20pt)

スポーツメーカーに勤める30歳の会社員・多和田聡子は、夜の公園で12歳の美しい少年・早見真修(ましゅう)と出会います。
かつての恋人から受けた心の傷を抱える聡子と、家庭内で親から冷遇され孤独を抱えていた真修。互いの痛みに触れた2人は、サッカーの練習を通じて静かに交流を深めていきます。「この感情は母性なのか、それとも――」という、名前のつけられない関係の行方を描いたヒューマンドラマです。
「このマンガがすごい!2017」オトコ編2位や「第3回次にくるマンガ大賞」3位など、当時の漫画賞でも高く評価されました。30歳の成人女性と12歳の小学生という危うさをはらんだ設定ですが、安易な展開には逃げず、2人が過ごす時間の尊さと周囲からの冷たい視線を誠実に描き出しています。年月が経ち、真修が成長していく過程も丁寧に追われていきます。
単行本は全9巻で完結しています。初出は双葉社の『月刊アクション』で、現在の単行本は講談社のヤンマガKCスペシャルから刊行されています。最終9巻は2020年12月4日に発売されました。すでに物語は完結しているため、2人が選んだ結末を最後まで見届けることができます。
年の差ゆえの社会的な視線や倫理の問いに向き合った作品で、人間関係のあり方を深く考えさせられます。静かで繊細な心理描写を味わいたい人や、割り切れない感情を丁寧に描いた物語を読みたい人におすすめです。

ポチップ
12位『東京タラレバ娘』東村アキコ(18pt)

Kiss(講談社)で連載された大ヒット作です。「タラレバばかり言ってたら、こんな歳になってしまった」。
それなりに生きてきたはずなのに、気づけばアラサー・独身になっていた売れない脚本家の倫子。高校時代からの親友2人と居酒屋で女子会を繰り返しながら、厳しい現実と向き合っていく姿を描いたコメディです。
仕事や結婚、将来への焦りを抱える倫子の前に、妄想のキャラクター「タラ」と「レバ」が現れ、痛いところを突くキツい言葉を次々に浴びせてきます。東村アキコ先生らしい強烈な自虐とスピード感あふれる笑いで、同世代の読者を中心に圧倒的な共感を呼びました。「タラレバ女」という言葉が流行語になるほど、当時の世相を鋭くとらえた作品です。
現実逃避と厳しい現実の落差が笑いと共感を生み、居酒屋でのリアルな女子会トークはドラマでも話題を集めました。
単行本は全9巻で完結しています。最終9巻は2017年7月13日に発売されました。2017年1月からは日本テレビ系列で吉高由里子さん主演の連続ドラマも放送されています。9巻で綺麗に読み切れる分量なので、ドラマを観たことがある人も原作のキレ味を最後まで楽しめます。
リアルな焦りや言い訳を笑い飛ばす筆致が冴え渡っており、「自分のことかもしれない」と胸を押さえながら読んだ人が続出しました。アラサー世代はもちろん、日々の選択を先送りにしがちな人なら刺さるセリフがたくさん見つかるはずです。

ポチップ
13位『空挺ドラゴンズ』桑原太矩(9pt)

龍を追って空を駆ける捕龍船「クィン・ザザ号」。巨大な龍を仕留めれば一獲千金、新鮮な肉も食べ放題。けれど狩りに失敗すれば命を落とす危険と常に隣り合わせ――。空と龍に魅了された乗組員たちの冒険と、世界を旅するグルメ紀行を描いた作品です。
かつての捕鯨船を空の船に置き換えた世界観と、重厚な筆致で描き出される龍や雲海の迫力が大きな見どころです。
作中では捕獲した龍を使った料理描写が丁寧に描かれ、冒険活劇の興奮とファンタジーメシの面白さを同時に味わえます。船員たちの持ち場ごとの仕事ぶりや船上生活のディテールもしっかり描かれており、架空の世界が現実味を帯びて感じられます。
単行本は既刊22巻で、good!アフタヌーンにて連載中です。最新22巻は2026年6月5日に発売され、旅の物語は今も続いています。2020年にはポリゴン・ピクチュアズ制作によるアニメも放送・配信されました。じっくりと長く続いている長編なので、世界観に浸りながら読み進めるのに向いています。
壮大な空の冒険と美味しそうな料理の両方が楽しめる作品で、船上生活の独特な空気感が魅力的です。『ダンジョン飯』のような架空の生態系や食の描写が好きな人、船旅やスチームパンク風の世界に憧れる人にぴったりです。

ポチップ
参考:マンガ大賞2018の結果

翌年のマンガ大賞2018の最終結果も、参考として一覧表を掲載しておきます。
| 順位 | 作品 | 作者 | 得点 |
| 大賞 | BEASTARS | 板垣巴留 | 78pt |
| 2位 | 我らコンタクティ | 森田るい | 68pt |
| 3位 | 凪のお暇 | コナリミサト | 56pt |
| 4位 | ダンジョン飯 | 九井諒子 | 52pt |
| 5位 | 不滅のあなたへ | 大今良時 | 47pt |
| 6位 | ランウェイで笑って | 猪ノ谷言葉 | 46pt |
| 7位 | とんがり帽子のアトリエ | 白浜鴎 | 42pt |
| 8位 | メイドインアビス | つくしあきひと | 40pt |
| 9位 | 映像研には手を出すな! | 大童澄瞳 | 38pt |
| 10位 | 映画大好きポンポさん | 杉谷庄吾 | 28pt |
| 11位 | 約束のネバーランド | 出水ぽすか・白井カイウ | 26pt |
| 12位 | ゴールデンゴールド | 堀尾省太 | 13pt |
『ダンジョン飯』『約束のネバーランド』『ゴールデンゴールド』の3作は、2017年に続いて2018年にもノミネートされています。特に『ダンジョン飯』は2年連続で上位に食い込んでおり、選考員の確かな目利きがうかがえます。
どの作品から読む?

ノミネートされた13作品はどれも個性的ですが、どこから読み始めるか迷っている人向けに選び方の目安をまとめました。
短くサクッと読み切りたいなら、全1巻で美しく完結する『金の国 水の国』や全8巻の『ファイアパンチ』が手に取りやすいです。圧倒的な主人公の勢いに圧倒されたいなら『響~小説家になる方法~』、緻密な世界観と料理を楽しみたいなら『ダンジョン飯』、先が読めない頭脳戦が好きなら『約束のネバーランド』が向いています。
全40巻の『アオアシ』は大長編ですが、熱いスポーツものや成長劇が好きな人なら間違いなく夢中になれるはずです。連載が続いている『波よ聞いてくれ』『ゴールデンゴールド』『空挺ドラゴンズ』の3作は、リアルタイムで新刊を待つワクワク感を味わいたい人におすすめです。
まとめ
ノミネート全13作品の現在の状況を整理すると、完結済みが『響~小説家になる方法~』『金の国 水の国』『ダンジョン飯』『アオアシ』『約束のネバーランド』『ファイアパンチ』『ハイスコアガール』『からかい上手の高木さん』『私の少年』『東京タラレバ娘』の10作品。現在も連載中なのが『波よ聞いてくれ』『ゴールデンゴールド』『空挺ドラゴンズ』の3作品です。
マンガ大賞2017は大賞の『響~小説家になる方法~』をはじめ、2位の『金の国 水の国』、3位の『ダンジョン飯』まで僅差が続く大接戦でした。選考員の書店員さんたちが自信を持って推薦しただけあって、どの作品も独自の魅力に満ちています。
当時は連載が始まったばかりだった作品の多くが、今では最後まで完結しています。『響』の全13巻も、『ダンジョン飯』の全14巻も、『約ネバ』の全20巻も、途中で待たされることなく結末まで一気に読めるのが現在の大きなメリットです。
『約束のネバーランド』と『ファイアパンチ』は、密度の高いストーリーを一気読みしたい人に今でも強くおすすめしたい2作です。時間が経っても「面白い漫画」の確かな基準として色褪せない作品ばかりですので、気になったタイトルがあればぜひ1巻の試し読みから触れてみてください。
以上、マンガ大賞2017の結果とノミネート13作品のまとめでした。
おわり!

